ダラークライシスへの道

ダラークライシスへの道

ダラークライシスへの道「経済力の圧倒的優位性の喪失」

第二次大戦後、米国は世界の中で圧倒的な経済力を誇ってきました。しかし、新興経済国である中国に抜かれるのはもはや時間の問題となってきました。米国と中国の経済力を、1年間に国内で生み出される所得の総和である名目GDPの規模で比較してみましょう。

 

IMFのWEOの推計によれば、2009年に14.1兆ドルであった米国の名目GDPは、15年には18.0兆ドルに増加します。一方、中国の名目GDPは、09年の5.0兆ドルから15年には10.0兆ドルに倍増するものの、まだ米国の半分強の水準です。

 

しかし、これは中国が為替レートを実力よりも過小に誘導しているためです。そこで、ドル建ての名目GDPを算出する為替レートを、実態を反映した購買力平価に変えて計算をやり直すと、中国の名目GDPは、09年に9.0兆ドルとなり、また15年には17.1兆ドルまで拡大するという推計になります。

 

すなわち、中国経済は今後5年程度で米国にほぼ匹敵する規模になり、米国が基軸通貨国の第一要件である経済力の圧倒的優位性を失うのは時間の問題となってきました。

1980年来の金融バブルの清算

また米国経済は、1980年以降に発生した負債バブルの清算のため、今後IMFの推計の通り順調に拡大を続けることは難しいかもしれません。名目GDPを国内で生産される所得の総和といいましたが、それは同時に国内で生産される財とサービスの総和でもあります。

 

すなわち、米国の名目GDPは、1年間に米国内で生産される財とサービスの総和であり、経済規模を表したものです。これに対して、株式や借り入れによって米国経済がどれぐらい負債に依存しているかをみてみましょう。

 

米国のGDPに対する負債(株式と市場性債務の合計)は、1945年から80年代半ばまでの米国経済が製造業中心に拡大していた頃は、ほぼ300%の水準で安定的に推移していました。ところが、その後、米国経済の構造が金融緩和とバブルに助けられた金融産業中心の成長にシフトすると負債依存度が急激に上昇しました。

 

84年に310%であった負債比率(名目GDP比)は、90年には345%、2000年には431%、また、サブプライム・クライシスの07年には464%までも文字通りバブルのように膨張します。その後、米国の金融バブルは崩壊しましたが、米国の負債比率はいまだ高水準のままです。

 

家計部門のバランスシート調整を伴う不動産バブルの清算、不動産バブルを担ってきたGSE (政府支援公社)とよばれるファニー・メイ、フレディー・マックといった住宅金融公社の整理もこれからが正念場です。その過程で、米国の負債比率は、バブル前の水準である300%程度まで是正される必要があるでしょう。

 

換言するなら、米国経済は、少なくとも今後5年ないし10年間、負債削減(ディ・レバレッジ)による調整局面が継続し、その間、本格的な景気回復は望めないとみておいた方がよさそうです。

 

最近、米国の一部の経済指標に明るさが出始め、ブッシュ減税の延長も決定されたことから、景気に対する楽観論から長期金利が上昇しています。しかし、バランスシートが毀損した借入過多の状態で長期金利か上昇すれば、早晩景気に悪影響が出てきます。すなわち、景気楽観論とは裏腹に、長期金利の上昇は米国経済にとって大変危険なサインと捉えるべきです。

なぜFX、バイナリーオプション投資家はドルクライシス(ドル危機)に注意せよ!

ドルの実力を示す実質実効為替レートは、変動相場制移行以来の危険水準まで下落している。いつドルの暴落懸念が高っても不思議ではない状況だ。昨年のユーロクライシスに続き、今年はドルクライシス(ドル危機)が市場を席巻するかもしれない。FX、バイナリーオプション投資家は、この為替相場のテーマに注目しなくてはいけない。
ホーム RSS購読 サイトマップ